星空保護区の目的と条件
“光害”のない夜空を守る国際認定制度
「星空保護区」とは、光害の影響のない、暗く美しい夜空を保護・保存するための優れた取り組みを称える国際認定制度です。2001年にダークスカイインターナショナルが活動を始め、これまでに世界各地で累計100,000㎢以上の夜空を保護してきました。
認定の条件
星空保護区は単に「星がきれいに見える場所」ではありません。光害から夜を守ることを目的としているため、光害対策をして暗さが基準値に達しているか、光害に関する教育プログラムやイベントを行っているかなどが、認定の条件になります。
多方面への影響
夜の暗闇を守ることは、野生動物の保護やエネルギー節減といった環境面に寄与するだけでありません。人間本来の生活リズムを取り戻したり、夜という普遍的な資源から示唆を得たりすることにもつながっているのです。
実際、神津島では海岸沿いの道路灯を見直したことで、10年ぶりにウミガメの産卵が確認されました。照度が低く静かな砂浜が戻ったことで、新たにウミガメが上陸する海岸も現れています。
世界のさまざまな星空保護区
世界の有名な星空保護区
ダークスカイ・コミュニティやダークスカイ・パークなど、場所の特性によって5つのカテゴリーがありますが、全てのカテゴリーの認定地を総称して日本では「星空保護区」と呼びます。2020年12月現在、世界には150ヶ所の保護区があります。なかでもニュージーランドのテカポやナミビア共和国のナミブ砂漠、アイルランド・ケリー州にあるアイベラ半島などは、特に星空が美しいことで有名で、日本からの観光客にも人気があります。
日本にある星空保護区
日本では2018年3月に西表石垣国立公園が、続いて2020年12月に神津島がダークスカイ・パークに認定されました。次いで岡山県美星町や福井県大野市南六呂師地区が認定され、他にも国内のいくつかの地域が申請に向けて準備を進めています。
神津島星空保護区のロゴマーク
地理的な特徴
光害の少ない理由
神津島は、東京から南へ約180km、伊豆諸島の真ん中あたりに位置します。神津島港を中心に、1700人ほどの島民の多くが西側の集落に集中する「一村一集落」なので、集落の周辺を少し離れると外灯もまばらになります。そのため夜の暗さと星明りが際立ちます。
観賞に適した地形
昼間は式根島や三宅島も見渡せますが、夜に星空観賞の妨げになるほど、他の島から出る光で影響を受けることはありません。ほどよい高低差があり、東西に開けた浜辺もあるので、星空観賞に適した地形と言えます。
暮らしに溶け込んだ星空
海と星が寄り添う暮らし
神津島はキンメダイ漁を中心に、昔から漁業が盛んな島。漁師たちはまだ暗いうちから、満天の星のもと出港していきます。島の中学と高校は、校庭から前浜海岸を見渡せる立地。子どもたちは夕日や一番星を見ながら下校していきます。海から見たり、学校から見たり、島のどこにいてもきれいな星空がある生活を島の人々は送っているのです。
島まるごとが保護区に認定
このように島全体で星空を楽しめる神津島。保護区の認定カテゴリは「ダークスカイ・パーク」ですが、島全体まるごと認定されたという特徴から「ダークスカイ・アイランド」の呼称を使用することが認められています。
街灯の取り替え
光の漏れない街灯へ
神津島では2019年夏頃から、星空保護区の申請に向けて準備を進めてきました。そして最もポイントとなるのが、夜空に光がもれない光害対策型の街灯・防犯灯に取り替える事業です。
全ての街灯を改修
すべての街灯を取り替えるといういうのはコストも時間もかかる事業ですが、東京都のバックアップもあって急速に進められ、およそ2年半をかけて、2021年3月にすべての街灯が光害対策用に改修されました。
住民の反応
住民からの評判も良く、安全性を心配する声もほとんどありません。「あそこはもっと暗くできるのではないか」といった積極的な声も挙がったそうです。
光害対策型の街灯は、従来と比べて上方への光の漏れと眩しさを抑えている。
島民ガイドの育成
星空観賞会が評価のポイントに
光害に関する普及啓発活動やイベントが定期的に実施されていることも、認定条件のひとつです。そこで評価されたのが「島民ガイドによる星空観賞会」。星空保護区申請に取り組む前からスタートしていた事業です。
島民ガイドの学びと拡大
2016年から、島民自らが星空案内できるようにと始まった「神津島星空ガイド養成講座」では 四季を代表する星座や、星座のルーツ、星の見つけ方、月の文化などを座学と実地で学びます。講座を受けた「島民ガイド」による星空ツアーは神津島観光の目玉にもなり、多い時にはひと晩に20人近く参加することもあります。
島民理解の広まり
保護区への理解を深める取り組み
光害に関する啓発として大事なのが、島民への説明です。街灯の明るさを落とすと言われると、安全面を不安視する声が挙がってもおかしくありません。小さな島なので、保護区認定によるオーバーツーリズムの懸念などもあるでしょう。
条例整備と住民向け講演会
島では「神津島村星空公園条例」や「神津島村の美しい星空を守る光害防止条例」といった条例整備に加え、住民に向けた講演会を開催して住民理解を促していきました。結果として、前述のとおり街灯の取り替えを不安視する声は少なく、自分たちには当たり前だった「きれいな星空」を再発見するきっかけとなったようです。
星空保護区から更なる挑戦へ
神津島エコツーリズム推進協議会の立ち上げ
星空を守る取り組みは、島全体の自然との向き合い方へと広がっています。2024年には「神津島エコツーリズム推進協議会」が立ち上がり、星空保護区で培った経験を礎に、環境保全と観光を両立させるエコツーリズム構想への挑戦が始まりました。エコツアーなどの開催を通じて「自然を見せる観光から、自然を守る観光へ」を実現すべく、神津島の自然すべてを未来へつなぐ挑戦へと広がっているのです。
国内の星空保護区同士のつながり
国内の星空保護区に認定されている地域と協力し、光害対策(環境保全)の大切さを伝えながら、星空保護区の活動を全国へ広めていくことを目的に令和6年5月に「星空保護区認定地連携推進協議会」が発足されました。
これまで、パンフレット制作などの共同活動を通じて連携を深めてきた中で、「もっと地域同士が力を合わせ、星空の魅力を広く伝えていこう」という思いが高まり、設立へとつながりました。
今後も、美しい星空を守り、その価値をより多くの皆さまに届けられるよう、連携して取り組んでいます。
星空保護区に込めた思い
自然のままの夜空を守る
ダークスカイインターナショナルでは、暗い夜空を守り、保存するための優れた取り組みを評価しています。さまざまな専門家が連携・協力し、未来を見据えて活動しています。
美しい星空を次世代へ
古来から人々は星を道しるべに旅をしたり、星空から科学や文学の着想を得たりしてきました。昔の人が見上げ、わたしたちが子どもの頃に見上げた星空を、いまに取り戻す。そして、ずっと先の子どもたちにもつないでいく。そんな人類共通の遺産を守っていくために、星空保護区としての神津島の取り組みは続いていきます。