神津島の神様は
どこからきたの?

神津島に鎮座する物忌奈命神社、
阿波命神社の二社は、
格式の高い式内名神大社です。
祀られている神様は、
伊豆の神様と深い縁があります。

神津島の名神大社
~名神大社とは~

東京都では物忌奈命神社と
阿波命神社の2社のみ

神津島にある神社のなかで、神職・氏子組織によって維持されている神社は三社あります。

  • 物忌奈命神社(ものいみなのみことじんじゃ)
  • 阿波命神社(あわのみことじんじゃ)
  • 日向神社(ひゅうがじんじゃ)

そのなかでも、物忌奈命神社と阿波命神社の二社は、式内名神大社です。式内とは927(延長5)年に略完成した『延喜式神名帳』に記載されている神社のことで、名神大社とは古代神社の社格のひとつで、古来より霊験が著しいとされる名神を祀る神社とされています。
『延喜式神名帳』に記載されている日本全国の神社2861社のうち、名神大社の社格を与えられたのは220社程度、東京都において名神大社は、神津島に鎮座する物忌奈命神社と阿波命神社の2社のみです。

事代主命の本后と長子を
祀った神社

物忌奈命神社と阿波命神社の歴史は古く、『続日本後記』840(承和7)年には下記のような記載があります。

伊豆の国に言う。賀茂郡に造作の島あり。本の名を上津島(こうづしま)の名づく。この島に座します阿波命は三島大社の本后なり。又、物忌奈命は阿波命の御子神なり

これが、二社の史料上の初見にあたるとされ、物忌奈命は事代主命(ことしろぬしのみこと)の長子、阿波咩命(あわのめのみこと)は本后とされています。
事代主命は、縁結びの神様として知られている大国主命の長子で、伊豆半島を足場にして伊豆の島造りをされた神様といわれています。

事代主命の本后と長子を
祀った神社

事代主命には多くの后神がいました。そのなかの一柱・後后の伊古奈比咩命(いこなひめのみこと)が冠位を授けられながら、本后である阿波咩命には沙汰がなく、阿波咩命は憤りました。これにより、838(承和5)年の天上山大噴火が起きたという記述が『続日本後記』にあります。その後、阿波咩命と御子神の物忌奈命は朝廷より冠位を授けられ、事代主命と縁の深い神として高い社格を保っているといわれています。

神津島の神々と
伊豆の神様との
つながり

伊豆半島の三嶋大社の神と
后神・御子神の関係にあり

事代主命は、全国各地・縁のある地に祀られていますが、静岡県の三嶋大社(※)では積羽八重事代主神(つみはやえことしろぬしのかみ)として祀られています。三嶋大明神(みしまだいみょうじん)と表記されていることもありますが、三嶋大明神は、積羽八重事代主神と大山祇命(おおやまつみのみこと)の二柱の神を総じて称したお名前になります。

事代主命は、伊豆半島を足場にして伊豆の島造りという大事業をされた神様といわれています。このようなご神威を背景に、伊豆諸島の主要な神社の神々は、伊豆半島の三嶋大社の神と后神(夫婦)・御子神(親子)の関係にありました。

(※)三嶋大社…参考文献内に表記されている「三島大社」以外、当サイトでは「三嶋大社」と表記しています。

事代主命(画像提供:三嶋大社)。事代主命は、俗に「恵比須様」ともいわれ、漁業や航海の守護神であり「七福神」にも数えられています。福徳円満、商売繁盛の神様(金福神)としても信仰されています。

伊豆諸島創世を伝える
『三宅記』

事代主命の伊豆の島造りの大事業について、『三宅記』には次のように記載されています。

第一の島をば初の島(初島)と名付け給う。
第二の島をば島々の中程に焼き出し、それに神達集り給いて詮議有りし島なれば神集島(神津島)と名付け給えり。
第三の島をば大なる故大島(伊豆大島)と名付け、
第四の島は塩の泡を集めてわかせ給えば 島の色白き故に新島と名付け、
第五の島は家三つ双びたるに似たりとて三宅島と名付け、
第六の島は明神の御倉とおっしゃって御蔵島と名付け、
第七の島ははるかの沖に有りとて沖の島(八丈島)と名付け、
第八の島は小島(八丈小島)と名付け、
第九の島はウの花(※)に似たりとてヲウゴ島(青ヶ島)、
第十の島をば十島(利島)と名付け給う。

(※)ウの花ではなく、天狗の鼻のような王の鼻で大野原島であるという説もあります。

神津島の神社と
縁のある神社

神津島の神社に祀られている神様は事代主命と深い関係にありました。遥拝所として后神・阿波咩命、御子神・物忌奈命を祀った神社が、伊豆にいくつかあります。

  • 三嶋大社

    静岡県三島市

    御祭神は、大山祇命(おおやまつみのみこと)、積羽八重事代主神(つみはやえことしろぬしのかみ)。御二柱の神を総じて三嶋大明神と称しています。境内の摂社には、事代主命の后神・阿波咩命、御子神・物忌奈命が祀られています。

    伊豆国一の宮として、源頼朝が挙兵に際し祈願をよせ、緒戦に勝利したことでも有名。
    三嶋大社の本殿の隣にある若宮神社。物忌奈命が主神として祀られている。
  • 伊古奈比咩命神社
    通称白濱神社

    静岡県下田市

    御祭神は、伊古奈比咩命(いこなひめのみこと)、三嶋大明神、見目、若宮、剣ノ御子で、主神は、三嶋大明神の后神の一柱・伊古奈比咩命。縁結び、子育てのご神徳があるといわれています。

    写真提供:白濱神社
  • 若宮神社

    静岡県南伊豆町

    月間神社(つきまじんじゃ)(※)に祀られていた三柱・事代主命、阿波咩命、物忌奈命が、地理の変遷により各地に遷座し、この地(当時は湊村)に遷座して祀られたのが物忌奈命と伝えられています。若宮神社では、学業、産業の神様として親しまれています。また、三宅島の小高い山頂にも物忌奈命を御祭神とする若宮神社があります。

    (※)旧称:竹麻神社(ちくまじんじゃ)