漁業と祭祀の関係
「かつお釣り神事」をはじめ、神津島では漁業が神社の祭祀と密接な関係をもって行われています。また、願かけに3つの神社をお参りする風習(お百度参り)もあります。
「かつお釣り神事」をはじめ、神津島では漁業が神社の祭祀と密接な関係をもって行われています。また、願かけに3つの神社をお参りする風習(お百度参り)もあります。
寒参 り
寒参りは、1月の小寒から大寒までの寒中、神前で家族・親族の無事を祈念するものです。神前読経(しんぜんどきょう)ともいい、神仏習合の名残を残す神津島ならではの風習です。
寒入りしてから寒が明けるまで、物忌奈命神社では拝殿の前で正座をして、漁に出る家族の無事を祈る女性たちの姿がありました。信仰心の篤い女性のなかには、寒参りの前に心身を清浄にするため、お風呂で水垢離(みずごり)をしてから、毎日神社に行って祈願していたそうです。この時期は、日没後に寒参りをする参拝者のため、神社の拝殿の照明は明け方まで灯されていました。
お百度参り
寒参りは、漁に出る家族の無事を祈り女性たちが行うものでしたが、お百度参りは、若い漁師たちが、解禁前に航海の安全と豊漁を祈るための願かけです。願かけに出向く場所は、物忌奈命神社、阿波命神社、日向神社、天上山(お不動様)、金比羅様、秩父山、二十三夜様など。無事に漁が終わると今度は願ほどき(願ばたし)に行きます。願ほどきとは、お供えをして、漁の無事を報告し感謝することをいいます。
籤祭
神津島では、花正月(※)の1月14日、早朝に各網組の代表が冷たい海に入り、身を清めてから物忌奈命神社に集まり籤祭を行っていました。籤祭とは、向こう一年間の漁場や操業の順位を決めるため、神の御籤を引く神事で、良い漁場を得たものが、豊漁を保証されると信じられていました。
※花正月とは、陰暦1月14日~15日の小正月(こしょうがつ)のこと。神津島や関東地方の一部で使われています。
かつお釣り神事
神津島の漁業は古来、カツオ漁を中心としており『伊豆海島風土記』には、その品質の高さについて記述されています。また、明治初期まで島民の税は鰹節で納められていたと伝えられています。こうした背景から、カツオの豊漁を願い、感謝を捧げる神事が行われるようになったといわれています。「かつお釣り神事」は、毎年8月2日に物忌奈命神社の境内で行われています。
神津島に伝わる風習
毎年、旧暦1月24日の夜に「二十五日様」という神が海から島に上陸し、物忌奈命神社の境内に上がってくるという伝承があります。
毎年、旧暦1月24日の夜に「二十五日様」という神が海から島に上陸し、物忌奈命神社の境内に上がってくるという伝承があります。
二十五日様
伊豆諸島には、新暦または旧暦1月24日前後の数日間、夜間の外出を控えて家で静かに過ごす風習があります。島によって風習の呼び名や習慣が少しずつ異なり、神津島では、「二十五日様」と呼ばれています。現在も旧暦で行われているのは神津島だけで、旧暦1月23日~26日までの4日間がその期間とされています。
23日は「三夜待ち」と言い、各家庭で餅や団子を支度して宴会を催し、二十五日様に備えます。
24日と25日は、二十五日様が島に訪れる日とされています。二十五日様は海から島に上陸し、物忌奈命神社の境内に上ってくると伝えられています。この2日間、日中に海や山、畑に行ったり、夜間に外出したりすると凶事が起こると恐れられています。海を見るのも控え、仕事も休みます。昔は、便器を土間に持ち込み、屋内での話し合いもひそひそとささやく程度で大声を出すことも禁じられていました。現在は、昔より濃い風習ではなくなっていますが、この二十五日様になるとスーパーは早くに店閉まいするなど、島全体の雰囲気が変わります。
26日は、「子だまり」といい、こども達は前日、前々日に引き続き早く就寝しなければならない日です。一方、大人たちは多少の動きをしても差し支えないとされています。
二十五日様については諸説あり、神津島では「猿田彦大神では?」という一説もあります。猿田彦大神は、『古事記』『日本書紀』でお馴染みの天孫降臨の道案内の神様です。その容貌は、身長がきわめて高く、赤ら顔で天狗鼻という恐ろしい顔つきであったという説があります。このような異形であることを人に視られることを嫌い、物忌を徹底させたのでしょうか…。
二十五日様が島に訪れる旧暦の1月24日と25日の2日間の夜、物忌奈命神社の神職は、村内の十字路や三叉路の分岐点にある「猿田彦大神」「道祖神」などと刻まれた石塔を巡拝します。このような習慣があることも、二十五日様にまつわる諸説のひとつになっているのかもしれません。
二十五日様の期間中、神社や家庭の玄関には「いぼじり」という厄除けを意味する飾りが施されています。「いぼじり」とは細い竹の先に藁を巻き、その先端を燻したもので、二十五日様が家に入らぬよう厄除けとして古くから伝えられています。いぼじりは、神棚など屋内に供えるものは約30センチで、玄関など屋外に配置するものは1.5~2メートルぐらいになります。
神津島の信仰を
感じられるスポット
神津島には、古くから多くの神話が残されていますが、特に有名なのは「伊豆諸島の水配り伝説」です。この伝説にちなんだ不入ガ沢(はいらないがさわ)、また二十五日様に関係してお参りする猿田彦大神、そして神津百観音など、神津島の人々の信仰の厚さを感じられるスポットが数多くあります。
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物忌奈命神社 -
神津島に鎮座する神社のなかでも中心となるお社。式内名神大社。/まっちゃーれセンターより徒歩1分
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阿波命神社 -
物忌奈命神社とともに、東京では2社しかない式内名神大社。/まっちゃーれセンターより車で17分
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日向神社 -
物忌奈命の弟神・とうなえの王子を祀る多幸湾海岸上の社。/まっちゃーれセンターより多幸湾キャンプ場まで車で10分。そこから徒歩10分
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水配り像 -
前浜海水浴場にある「水配り伝説」を物語るモニュメント。/まっちゃーれセンターより徒歩2分
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多幸湧水 -
神津島の水の豊かさを象徴するスポットで「東京の名湧水57」のひとつ/まっちゃーれセンターより車で10分
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天上山 -
標高572メートルの台形状の山。伊豆の島々の水の配分「水配り伝説」の舞台とされている/まっちゃーれセンターより黒島登山口まで車で6分
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不入ガ沢 -
天上山にある神聖な場所で、足を踏み入れてはいけないとされている/まっちゃーれセンターより黒島登山口まで車で6分。そこから徒歩90分
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不動池 -
天上山にあるハート形の池。龍神様を祀る社があり、漁師たちの信仰の対象となっていた/まっちゃーれセンターより黒島登山口まで車で6分。そこから徒歩90分
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長浜海岸 -
色とりどりの玉石があることで知られる浜。別名・五色浜海岸とも言われている/まっちゃーれセンターより車で17分
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観音堂 -
かつての島民が「西国三十三観音霊場」を模してつくった霊場で、百観音のひとつ/まっちゃーれセンターより林道終点まで車で45分。そこから徒歩1時間
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秩父堂 -
百観音のひとつで、かつての島民が「秩父三十四ヶ所」を模してつくった場所/まっちゃーれセンターより徒歩60分
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舎人の庵屋堂 -
百観音のひとつ。基となっている「坂東三十三観音霊場」は源頼朝によって造られたもの/まっちゃーれセンターより徒歩30分
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猿田彦大神 が
多く祀られている地域 -
主に村内の三叉路に祀られている道祖神で、島内に27基あるといわれている/まっちゃーれセンターより徒歩10分
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- 物忌奈命神社
- 阿波命神社
- 日向神社
- 水配り像
- 多幸湾の湧水
- 天上山
- 不入が沢(天上山)
- 不動池(天上山)
- 長浜海岸
- 観音堂(百観音)
- 秩父堂(百観音)
- 舎人の庵屋堂(百観音)
- 猿田彦大神が
多く祀られている地域